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過去世代との共存
日本での5G通信サービスは2020年3月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが商用サービスを開始しました。2020年9月には楽天モバイルも商用サービスを開始しています。
一方で、2021年現在で最も使われている通信サービスはLTE・4Gが圧倒的で、補助的に3Gサービスが使われる形になっています。3Gサービスについては既に3キャリア全てから終了時期が告知されています。終了予定はNTTドコモが2026/03/31、KDDI・沖縄セルラーが2022/3/31、ソフトバンクが2024/01/下となっています。楽天モバイルは当初より音声もデータも3Gサービスを提供していないので、3G関連のアナウンスは何もありません。
3Gサービスの終了について | 企業・IR | ソフトバンク
また、現在主流のLTE・4Gサービスは5Gサービスが開始しても終了時期のアナウンスがされるような状況ではないため、今後7〜8年はサービスが継続されるものと考えています。5Gが十分に普及して、6Gのサービス開始の頃にそういった話になると思います。
他方で、携帯電話サービスで使用する電波の周波数帯は総務省が認可して各携帯電話キャリアが使用していますが、2G(PDC)で使用していた800MHz帯、1.5GHz帯は現在でも使用されている周波数帯であり、5Gでも標準化されていることから携帯電話用の周波数帯は基本的には使い回されるものと追加割当されるもので構成されています。
LTE・4Gと5Gで共用する周波数帯域とコアネットワーク
携帯電話キャリアは、それぞれ【コアネットワーク(コアNW)】と呼ばれるネットワークを持っています。加入者の携帯電話端末がSIMから契約情報を読み取って、コアNWの中で外部との接点である基地局と電波の送受信を行い、基地局から他のコアNWの装置やインターネットへの接続を行う形になっています。
3G・4GとコアNWを定義してきた3GPPが5GでもコアNWの定義を行い、標準化されていますが、無線通信部分を5Gとして既存LTE・4GコアNWに組み込んだ構成であるNSAという構成が定義されています。
SA(Stand Alone)とNSA(Non Stand Alone)
4GのコアNWであるEPC(Evolved Packet Core)と5GのコアNWである5GCはそれぞれLTEと5Gの端末を収容しますが、LTEが広く使われている状態の過渡期から機器更改を進めていくにあたって、3種類の構成が定義されています。
- EPC-LTE端末
- EPC/EPC拡張-LTE/5G端末 (NSA)
- 5GC/5G端末 (SA)
このうち、NSAはMN(Master Node/基地局)1とDC(eNB(/gNB)間のLTEキャリアを束ねてコアNWに接続する)で5G端末・gNB(5G基地局)へ接続できるようになっているようです。
最終的にはEPC(LTEのコアNW)と5GC(5GのコアNW)を接続して、LTEのサービス終了時はEPCを落とすことになるんでしょうが、5GCへの更改が進む過程ではNSAも広く使われるはずです。
NSAのデメリットとメリット
5Gになることで向上する性能(速度等)は享受できない
NSAはUEとMNが5Gですが接続するコアNWがLTEなので、5Gになることで得られるメリットのうち性能面についてはLTEの上限がのしかかります。これがドコモがなんちゃって5Gなのでそのまま5Gと表記してサービスを提供すると景品表示法に抵触するおそれがあるとしている理由です。
ドコモもLTEの5G転用のいわゆる「なんちゃって5G」は始めますが、開始時期は2021年の後半からとしています。
今回ソフトバンクが開始したLTEの周波数帯転用の5Gもプレスリリース内に「※ 既存のLTE周波数帯を利用した5Gの通信速度は、SoftBank 4GまたはSoftBank 4G LTEと同等となります。」という注釈があります。
LTE周波数帯の700MHz・1.7GHz・3.4GHz帯を利用した5Gサービスを2月15日から順次提供開始 | 企業・IR | ソフトバンク
新設する基地局でない場合、既存のLTE基地局からの出力が減るため、LTE端末の通信速度が遅くなる
また、端末についても基本的にはNSA構成の5Gへ接続可能な場所はLTEでも接続可能なはずで、端末の5G機能を使ってLTE網と同じ使い勝手の通信を行うことになるので、LTE接続の場合と比較してアドバンテージはないはずです。逆に、基地局を新設するのではない場合は既存の基地局で出力しているLTEの出力幅を減らした分をNSA構成の5Gで使うため、LTE接続時の速度が下がることが予想されます。
5GコアNWの拡大を様子を見ながらできる(機器更改のコストが急に必要にならない)
キャリアにとっては、5G対応として必要になる機器の調達コストがローンチ時に物凄く必要になる自体を避けられるので、継続的な調達になることはキャリアにとってもベンダーにとってもメリットにはなります。
ネットワーク構成は日本語で読める公開されている文献としてはNTTドコモのテクニカル・ジャーナルVol.25 No.3(Oct. 2017)が一番参考になると思います。
ソフトバンクがLTEで使用している周波数帯の5Gへの転用を開始
既に触れましたが、2021年2月15日からソフトバンクではLTEの転用による5Gサービスの提供を始めています。
導入にはメリットもあるので、(このサービス開始については)頭ごなしに批判するつもりはありませんが、ソフトバンクの企業姿勢はどうなんだろうなと思っていることがあります。
今回、この転用で使えるようになる5Gのバンド(n28 n3 n77)はソフトバンクから発売済みの5G端末についてはアップデートで使用可能になるよう対応とのことです。グローバルモデル含めて。
古式ゆかしい携帯電話ビジネスでは端末メーカーがキャリアを回って「うちで作らせてもらえませんか?」「いいですよ。〇〇〇〇台お願いします。値段はこちらで」というキャリアモデルが中心でした。キャリアの要望に沿ってアプリも作ってプリインストール(スマホで顕著でしたね)。
この流れはガラケー時代からのもので、スマートフォンに変わっても続いていました。大きく変わったのは、iPhoneがほとんどカスタマイズさせないまま日本でも展開したことです。
グローバルモデルのキャリアカスタマイズとは
グローバルモデルを通信キャリアが販売するにあたって、国によってことなる事情に応じて機能を追加したりするカスタマイズが行われますが、概ね良し悪しがあって最終的に無用の長物になるものがあります。
- 羊が追加される
- 消せないプリインアプリが追加される
- NOTTVが追加される(サービス終了)
- FeliCa/おサイフケータイが追加される(利用率が低い)
- アップデートがグローバルモデルよりも少なくなる(特にメジャーアップデート)
- ストレージが少なくなる
- SIMロックをかけられる
- SIMスロットが1つになる
- 対応通信Bandが減らされる・キャリア特有のものは追加される
Xiaomi Redmi Note 9Tの場合
無駄が少なくて廉価で割とスペックが高いので割と好きな小米。弊blogでも取り上げています。
小米専売店も入居する大魯閣草衙道/タロコパーク。どでかいショッピングモールには鈴鹿サーキットも。(高雄旅行)
日本でも直接商品を売るようになって、2021年2月2日にはFeliCa搭載の5GスマホとしてRedmi Note 9Tが発表されました。
このRedmi Note 9Tはグローバルモデルは2021年1月8日に発表されていて、ソフトバンク版との差分は以下となっています。
グローバル版 | ソフトバンク版 | |
---|---|---|
ストレージ | 64GB(UFS2.1)/128GB(UFS2.2) | 64GB(UFS2.1) |
FeliCa | 無 | 有 |
SIMスロット | 2(SIMロックなし) | 1(SIMロックあり) 解除可 |
対応5GBand | n1 n3 n5 n7 n8 n20 n28 n38 n41 n77 n78 n79 | n77 後述 |
この差分は概ねこれまでのグローバルモデルを日本キャリアが販売した時にされる変更がスタンダードに適用されたものになっています。
SIMスロットの数が減ったのはそれはそれとして、対応5Gバンドについて大幅に削減されました。特にLTEからの転用として使われることが多いバンド(n1〜n41)とKDDIとNTTドコモが割り当てられているn78、n79が削られています。
SIMロックについては購入後にSIMロックを解除することはできるので手間がかかるだけです。n78とn79は使えませんのでソフトバンク・ワイモバイルの5Gに対応するのみです。これが執筆時点での仕様です。
Redmi Note 9Tの5G対応バンドがソフトバンク転用バンドのみグローバル版から復活という珍事
ソフトバンクってこういうことするんだなぁという事例ですが、グローバル版では対応していた5Gバンドで日本発売時には削除されていたもののうち、LTEからの転用バンドは4月以降のアップデートで追加対応することになりました。なんということでしょう。
グローバル版 | ソフトバンク版 発売当初 | ソフトバンク版 2021年2月15日発表 |
---|---|---|
n1 n3 n5 n7 n8 n20 n28 n38 n41 n77 n78 n79 | n77(3.7GHz帯) | n3 n28 n77(3.4GHz帯) n77(3.7GHz帯) |
ケータイアップデートはかつては発売後にバグ修正で行う場合は台数×いくらでメーカー負担だった過去があるだけに、それを考えると最初から潰さなきゃXiaomiが追加対応する必要ないのにソフトバンクってこういうこと平気でするんですねというイメージしかないです。
また、Redmi Note 9Tの場合はFeliCa対応の為にグローバル版とは違うアンテナに変更したので、対応周波数がグローバル版とソフトバンク版で違うのは変更したアンテナで対応できないのかと思っていましたがそんなこともなく単にソフトバンクの要望だったんですね。つくづくガッカリです。
―― FeliCaは初めてですが、どういった苦労がありましたか。また、SIMフリースマートフォンでのFeliCaはいかがですか。
ワン氏 今回は初めてだったので、ソフトバンクから本当にたくさんのことを学びました。それほど大きな困難があったわけではありませんが、エンジニアリングのリソースはたくさん必要でした。より具体的に申し上げると、FeliCaチップのスペースを確保するため、バックカバーは新しく設計しています。FeliCaチップを搭載するため、アンテナの変更も必要になりました。
引用中の下線追加はこちらで行いました。
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- eNB(LTE基地局)とgNB(5G基地局)のどちらか [return]
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